こんにちは。
自律神経専門の整体サロンnaturaの平山です。
施術後、お客様からよくいただく質問があります。
「体が硬いのが悪いんですか?ストレッチを教えてください」というものです。
私自身の答えは、はっきりしています。体が硬いこと自体は悪いことではなく、筋肉を伸ばすこと自体が痛みの軽減に直結するとも思っていません。
むしろ現場で感じるのは、全身が均一に硬い人よりも、柔らかい部分と硬い部分が混在している人のほうが、痛みとして表に出やすいということです。

ある部位だけが極端に動きすぎ、別の部位が極端に動かない。
このアンバランスさが、体のどこかに過剰な負担を集中させ、痛みという形で現れやすいのではないかと考えています。
水泳の世界でよく言われてきたのは、「体が柔らかい選手ほど有利」という常識です。
しかし、北京・アテネ五輪で平泳ぎ二大会連続二冠という偉業を達成した北島康介選手は、実は「体が硬い」選手として知られていました。身長も水を掻く手足も水泳選手としては小柄で、当時の水泳界の常識に照らせば、柔軟性に乏しい彼は「伸びしろが少ない」とすら見られていたのです。
それでも彼は世界の頂点に立ちました。
かくいう私自身も、決して体が柔らかいほうではなく、側弯もあります。
それでもここ10年、痛みで悩んだ記憶がないのです。
この事実は、私たちが漠然と信じている
「柔らかい=優れている」
「柔らかい=健康」
というイメージに、一つの疑問を投げかけてくれます。

柔らかすぎることで起こりうるリスク
一般の方の体でも、同じようなことが言えます。
関節弛緩症(いわゆる「体が柔らかすぎる」体質)を持つ方は、決して珍しくありません。そしてこうした方々の中には、不安定感や慢性的なだるさ、繰り返す痛みに悩まされているケースが少なくないように見えます。
ただし、これは「柔らかいこと自体が悪い」という意味ではありません。
柔軟性を支える筋力や、関節の位置を感じ取る感覚(固有受容感覚)とのバランスが取れていない場合に、こうした不調につながりやすいと考えられています。
可動域が広い分、それを制御する周囲の筋肉が常に働き続けなければならず、結果として疲れやすさや慢性的な張りにつながることがある、というのが臨床的な見立てです。
北島選手のケースも、また私自身のケースも、体が構造的に「教科書通り」ではなくても、それを筋力やバランス、体の使い方の精度で補えていることの表れなのかもしれません。
「柔らかい=安定している」「構造が整っている=痛みが出ない」とは、必ずしも言い切れないのです。
痛みは「硬さ」や「構造」だけでは説明できない
もう一つ大事な視点があります。痛みは、可動域の狭さや、レントゲンに映るような構造上の特徴だけから生まれるわけではないということです。
硬さは、多くの場合、体が「今はこれ以上動かさない方がいい」と判断して起こしている防御反応であることがあります。もちろん、癒着や筋膜の問題など、ストレッチが有効なケースも存在します。
ただ、こうした防御的な硬さに対して外から強く引き伸ばそうとすると、かえって体が緊張を強めてしまうこともある、というのが現場での実感です。
大事なのは、可動域や骨格の見た目という「静的な形」だけでなく、体が状況に応じて緊張と弛緩を切り替えられているかどうか、という「機能」の側面もあわせて見ることだと考えています。

自律神経の調整力という視点
私たちnaturaが大切にしているのは、この「切り替える力」という視点です。
健康な体とは、単に柔らかい体や、左右対称に整った体のことではないと考えています。
動くべき時に動き、休むべき時に緊張を緩められる、そうした切り替えが自律神経によってスムーズに行われている状態も、健康を考える上で重要な要素の一つではないか、というのが私たちの立場です。
柔軟性も骨格の形も、あくまで結果の一側面であり、それだけをゴールや診断基準にしてしまうと、見落としが生まれる可能性があります。
北島選手が、そして側弯を持つ私自身が、そうした単一の指標だけでは測れない状態にあるように、私たちの体も、可動域や見た目という単一の物差しだけで健康かどうかを判断することはできません。
目指したいのは「柔らかさ」だけではなく「整った切り替え」
ストレッチや柔軟性のトレーニングを否定するつもりはありません。ただ、それだけを追い求めることが健康に直結するとは限らない、ということをお伝えしたいのです。
体が必要な時に必要なだけ動き、必要な時にはしっかり休める状態を取り戻すこと。私たちが施術を通じて目指しているのも、そうした調整力に働きかけることです。
柔らかくすることや、見た目を整えることだけを目的にするのではなく、体が本来持っている調整する力に目を向けること。それも、痛みや不調と向き合う上で一つの視点になるのではないでしょうか。




















