■はじめに
近年、起立性調節障害(OD)の子どもが急増しています。
治療をしていて感じるのは、単なる身体の問題ではなく、親と子どもの“価値観のズレ”が背景にあるケースが多いということです。
そして、そのズレは
「怠け」でも「甘え」でもなく、
時代そのものが変化しているサインでもあります。
■親と子の“時代感覚のズレ”が症状を長引かせる
多くのご家庭で見られる構図があります。
- 親:学校に行かせたい
- 子ども:学校に行きたくない
この見え方だけだと「意見の対立」のように感じますが、実はもっと深く、価値観の衝突が起きています。
⚪︎親の価値観
親世代は
「学校に毎日行くこと=将来の安定」
という教育を受けてきました。
そして
不登校は“悪いこと”という無意識の前提があります。
⚪︎子どもの価値観
一方で今の子どもたちは、
AIが知識を教えてくれる時代に生きています。
だからこそ、
“なぜ学校に行かなければいけないのか?”
という疑問を強く感じやすい。
そして、
- 一律の授業
- 競争偏重
- 集団に合わせること
- コントロールされる環境
これらが自分の感覚に合わないと感じる子が増えています。

親と子供は“どちらが正しい”ではなく、
生きている時代感覚が違うのです。
■起立性調節障害は“身体が教えてくれるサイン”
自律神経は、環境の影響を強く受けやすいものです。
起立性の子どもたちは
「無理をしてはいけない」という身体の声を敏感に受け取れるタイプが多いです。
つまり、
身体が“今の生き方は合ってないよ”と教えてくれている状態。
これは決して弱さではなく、
むしろ感受性の高さとも言えます。
■親が“薄々気づいている”こと
実は、多くの親御さんも気づいています。
「毎日学校に行くことが正しい時代は終わりつつあるのではないか?」
「この子の感じ方のほうが正しい気がする」
でも、
- 周りの目
- 自分が受けてきた教育
- 将来の不安
が邪魔をして、すぐに価値観を変えるのは簡単ではありません。
だからこそ、
親は頭では未来を理解しようとし、
子どもは身体で未来を生きている。
ここにズレが生まれます。
■親子の価値観が揃った瞬間に、改善が進む理由
治療の中で感じることがあります。
身体は“安心”したときに一気に整い出すということ。
特に、
- 子どもの感覚を認める
- 無理に学校に行かせようとしない
- 子どもの未来を信じられた
- 「行けたら行けばいい」と受け入れられた

こういう状態が整うと、
自律神経の緊張が緩み、身体が改善に向かいやすくなります。
身体はとても素直です。
「否定されている」と感じると緊張し、
「受け入れられた」と感じると改善していく。
その変化は、多くの臨床の場面で見られます。
■子どもたちは未来の価値観で生きている
今の子どもたちは、
大人よりも未来を先取りして生きています。
- AI時代に必要な力
- 多様性の価値
- 個性の大切さ
- 不要な努力を身体が拒否する感覚
- “意味のある学び”を求める姿勢
これらを直感で理解しています。
起立性調節障害は、その「未来からのメッセージ」を身体で表現しているとも言えます。
■起立性調節障害で悩む親御さんへ
起立性調節障害は、
決して「弱さ」でも「怠け」でもありません。
それは、
あなたの身体が優しく、強く、今の生き方にブレーキをかけているサイン。
そして、
親子が一緒に“新しい価値観”へ進むためのきっかけでもあります。
- 親は子どもの未来に耳を傾ける
- 子どもは自分の感覚を信じる
- 身体の声を大切にする
- 無理をしない
- 自分のペースを尊重する
そんな当たり前のことが、
自律神経にとって一番の薬になります。




















